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2007年6月 1日 (金)

vol.92 報恩感謝の日々を送って五十年

語り手:尾関仏具店社長 尾関 正夫さん(68)

婆 「最近、コマーシャルで『生前見積もりしませんか?』ってのがあるで、びっくりするなも。次から次へと変わったビジネス考えるなも」

エリ「生きてるうちに、お葬式の予算とか仏壇とかお墓の費用とか、相談にのってくれるらしいよ。おばあちゃんもやってみる?」

婆  「ええ??なんか、縁起でもないけど、死んでからバタバタしないように、それもいいかもしれんのぉ。しかしまぁ、時代は変わったなも。仏壇は、うちは昔から、尾関さんと決めとるで、今日は、仏壇の尾関さんとこに話を聞きに行こみゃ~か。エリちゃん、はよ、まわししや~」

エリ「なぜ、仏壇やさんになられたのですか?」

尾関「私は、幼い頃にこの家に養子に迎えられ、家業の仏壇やの仕事を小学生の頃から厳しく手伝うように言われてたんだよ。道具の名前が、なかなか覚わらなくて叱られながら覚えたなぁ。中学生の時には、船乗りにでもなりたいなぁ~なんて夢もあったけど、やはり、現実的に考えて、家業を継ぐことに決心したよ」

エリ「修行は、大変でしたか?」

尾関「そりゃ、厳しかったよ。当時、6人のお弟子さんがいて、親方より、早く起きて、吹き掃除から、仕事のしたくをしたもんだよ」

エリ「その中で特に心に残ってることは何ですか?」

尾関「漆(うるし)を塗るときは、ほこりを嫌うから、どんなに風の吹く寒い日でも、外からず~っと見ていたことかな。後は、漆の加減は、ねぶって(なめて)感覚を覚えるから、最初はひどくかぶれてお岩さんみたいになったよ。仏壇やの嫁さんは、最初は、全身かぶれてかゆくてかゆくてたまらんくらいかぶれるとこから始まるんだわ。うちの嫁さんもかわいそうなくらいひどかったよ。おかげさまで子供たちは、生まれたときから免疫があるから、大丈夫だったけどね」

婆  「へぇ~漆でかぶれるんだなも。わしらには、全くわからないご苦労があったんだなも」

エリ「楽しかった思い出はありますか?」

尾関「若いときには、近所のツレとよく飲みにでかけたもんだよ。職業を聞かれると、仏壇やというのが、気恥ずかしい気がして、適当なこと言ってごまかしてたもんだけど、だんだん自分の仕事に誇りを持つようになって堂々とした生き方をするようになったよ。自分の納得いく作品ができたときは、感動したもんだよ」

婆  「仏壇は、今も作ってみえるのかね?」

尾関「尾関仏具店では、オリジナル仏壇や修理・選択仏壇は、当店の工場で作っています。大手さんは、最近特に中国産やベトナム・インドネシア産の仏壇が多くなっているね。本来名古屋仏壇は、八ヶ所の重要な部品で組まれているから、八人の熟練した職人さんが分担で作るんだけどね。」

エリ「仏壇って、いくらくらいするんですか?」

尾関「親方の時代には、土地が300坪が800円の時に、1000円くらいの作ってたよ。価格はピンきりだから、お客様のご予算に合わせて選べますよ」

エリ「人生を振り返ってみて、いかがですか?」

尾関「商売のほうは、お蔭様でお客様の口コミでここまで続けてこられ感謝してます。妻には、多くの弟子の面倒を見てくれ、陰で支えてくれたので、本当に感謝しとる。妻が一度入院したとき、お茶を沸かしたまま、お見舞いに出かけ、病院で気がついて慌てて帰ったときは、寿命が縮んだなぁ。あの時は、妻のありがたみをしみじみ感じた事件だったね」

婆  「やはり、自営業の方は、いい時も悪いときも、ご夫婦で助け合いながら乗り越えてみえるなも。いいご夫婦が多いなも」

エリ「私も、そんな夫婦になれるようにいい人探さなきゃ。どんなお仕事も、深く聞いてみると、いろんなご苦労があるんですね。楽して儲かる、調子いいだけの人生なんてないんですね。今後の夢はありますか?」

尾関「息子が、薬剤師の免許まで取ったんだけど、長女の婿の工場長とともに、家業を継いでくれるといってくれて、とてもうれしく思っとる。息子が上手に商売を引き継いでくれることを祈ってます。今までたくさんのお客様にお世話になり、ありがとうございます。息子の代になってもよろしくお願いします」

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