5月号 日本に根付く「おかげさま」の精神
語り手:薬師寺副住職 山田法胤さん
――法薬師寺という寺のカラーについてもっと知りたいのですが。
山田 伽藍でよく修学旅行生を案内していた時は、学生ができるだけ退屈せずに、生き生きと聞いてくれて、帰るときに楽しめてよかったと思ってもらえるように考えて話をしたものです。「現場からの発想」というのが大切で、何かの法要の際にも来てくれる人の立場に立って、参加してよかったと喜んでもらえないかと一生懸命考えています。
――確かに、薬師寺の伽藍では僧侶が修学旅行生や信者らを案内しているのをよく見かけます。
山田 いま伽藍がある土地に、昔は池があって、藤原京が移転してきたときにそこに住んでいた龍を移したということが縁起に書いてあり、(平成15年の)大講堂落慶の時はそれにちなみ、龍を飛ばすことを思いつきました。とはいうものの実現はなかなか難しく、いろいろと考えた結果、特注で作ってもらった全長約40メートルの布製の龍を飛ばすことができました。荘厳な音楽が響き渡る中での演出で、訪れた人たちは驚いていました。
――それはすごかったでしょう。サービス精神のようなものが薬師寺の魅力の1つなのですね。
山田 おそらく昔の行事もみんなに喜んでもらえるよう工夫したいと思います。今の時代に生き、お参りにきてくれた人たちに参加してよかったと思ってもらえる行事にしたいのです。それが薬師寺の魅力になります。そして、その知恵は参拝者と一緒になる現場から生まれるのです。
――「発想は現場から」はどんな仕事でも大切ですね。副住職の語録をさらにお聞かせください。
山田 「おかげのおかげのおかげさま」と題して話すことがあります。日本人は実力ではないかと思うことについても「おかげさま」と言うと外国人は不思議に思うそうです。仏教に衆縁和合という言葉があります。すべての縁がつながっているという意味です。米は農家の人が作っていると思いがちですが、むしろほとんどは水と土と空気、光によってはぐくまれるのです。さらに台風に襲われないことで無事収穫できるのです。だから日本人は「今年は豊作ですね」と言われると「おかげさんで」とこたえます。気づきもしない陰の部分に対し「お陰さん」と言うのでしょう。
――おかげさまという言葉は日本人らしい、大切にしたい言葉ですね。
山田 企業の何十周年かの講義に呼ばれた際も、会社の創立者のおかげ、商品を買った客のおかげ、働いた人のおかげというふうに何回かのおかげをつけても足らないくらいで、今の幸せは衆縁和合から生まれたものでしょうと話しました。
(聞き手 岩口利一)
やまだ・ほういん
昭和15年生まれ。31年、薬師寺に入山し、39年、龍谷大文学部仏教学科を卒業。平成10年、執事長、15年から副住職。喜光寺住職。著書に「薬師寺」「仏陀の風景」など。










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